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建築について

前の話:これから先、SHIBAURA HOUSEが考えるビジョン

昔に比べて様々な機能が求められている中、建築にできることは何か

I: 先日妹島さんが設計された京都の集合住宅を拝見して、街をそのままスケールダウンしたような、小さな街のような印象を受けました。昔と比べて住宅も住むという単一の機能だけでなく、様々な要素が出てきていると思います。その分、他者との関わりも増えてきています。そういった傾向に対して建築ができることは何でしょうか。

S:例えば少し前に、自宅で仕事をする人が増えてきたということがありましたが、今ではさらに、例えば介護の人が外から家に入ってくるケースが生まれたり。自分も親の介護に直面したことがありますが、もっと自然に人が入って来られるような空間の方が良いと思うようになりました。これまでは暮らす上での機能が重視されてきましたが、今はそれ以上の機能が検討されている。大家族から核家族に移ってきた時代が、今度は家族内だけでは暮らしていけないような、周囲の人 との助け合いでうまくまわっていくような時代に変化してきています。会社も同じことが考えられるのかもしれません。

I:朝日新聞に妹島さんのインタビューが掲載されていましたね。ちょうど思想家の内田樹さんが言っていることにも共通するように思いました。彼の著書の中で『拡大家族論』というのがありました。皆が貧しくなってきて助け合わないといけない時代で何をするか、ということを指摘しています。実際に内田さんは神戸に「凱風館」*という合気道の道場とコミュニティスペースを兼ねた施設を作っています。ほかにも個人でありながら 「小さな公共」という感覚をもっている人が増えてきていると思います。経済的に成長していくことが難しい世の中で、何を豊かと考えて生きていくのか考えなくてはなりません。

「凱風館」の設計を担当された建築家・光嶋裕介さんによる記録
http://www.1101.com/ourhome/

S:そうですね。経済成長率が何%上がったとか、そういったことだけが取り沙汰されていますが、それだけでは計れないことを前提に考えていくことも大事ですね。

I:個人が公共的な意識を持っていくとすれば、一方でここ数年、公共の施設や行政が求めるものに変化はあるのでしょうか。また建物が竣工した後に、建築家として担っていくものがあるのか、妹島さんに聞いてみたいと思っていました。

S: うーん、ゆっくりだけれど少しずつ変わってきていると思います。住人の人たちも、自分たちにとってどういった場所がいいのかを真剣に考える人が出てきているように感じます。 驚いたのが、設計をさせていただいた「なかまちテラス(小平市立仲町公民館・仲町図書館)」で講座の開催を依頼されたことです。2時間で計10回。毎回、20~30人 の参加者がありました。建築に関連する講座が主で、構造の話やランドスケープの話があったりしましたが、普通のおじさんやおばさんがものすごく熱心に受講されていて、ちょっと感動しました。地域の講座が定着していて、住民の声が反映されるのは良いことだと思います。

I: 公共という点で、ここ何年かで印象に残っているのはニューヨークのハイライン(High Line)です。いつになったら日本でもハイラインのような例ができるのか考えてしまいました。それには行政自身が主体性や興味をもって自分たちでマネジメントする力を培っていくこと、建築家がどうやってその中に入っていけるのかということが、問題としてあるような気がします。

S:震災復興もそうですね。建築家や行政など、それぞれがビジョンを持ちつつも、もっとオーバーラップしないといけない。ショッピングモールやオリンピックに向けての都市開発など、ある種諦めている部分もあります。本当は、行政や建築家といった枠組みを超えて、皆が手をとりあって日本のこれからについて考えるべき。

I:確かにヨーロッパなどで、行政の中でも文化的なことに理解のある政治家が登場して、がらっと状況は変わることもありますね。日本でもぜひ、そうなってほしいですね。

S:瀬戸内の直島など、うまくいっている例もあると思います。

I:この前、興味があったのでオリンピックと文化政策をテーマとしたシンポジウムに行ってきました。驚いたのは、文化やアートにあまり理解がないような人たちが中心になって動いているということ。ボトムアップ型で何かできるチャンスでもあるけれど、それが難しい。

S: 例えば、建築学科を卒業した人の数はとても多いので、建築の分野で活動していなくても、他の分野で活躍できるいろいろな可能性があります。建築を学んだことは、いろいろなポジションで活かせるはず。商業専門の人でも建築的素養がある人がいるとか、オーバーラップする部分が増えていけば、もっと面白いものが生まれていくと思います。