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The Kama City Residency Biennale (滞在記)

2015.12.04

BY 元行 まみ

滞在記

ー日本にいながら、時差ぼけのようだ。 
これは、嘉麻から東京へ帰ってきた時に私が最初に抱いた感想です。 

私はこの夏、福岡県嘉麻市で行われたアーティスト・イン・レジデンス“The Kama City Residency Biennale”*に参加し、リサーチを行いました。 
SHIBAURA HOUSEに入って間もなく「新人研修ということで、一ヶ月間行ってきてください」と言い渡されて、右も左もわからないまま向かった先は、レジデンス会場の旧千手(せんず)小学校でした。 


千手小学校の校庭と校舎。樹齢130年のけやきの木とともに地域の記憶が集積する場所。

* 2015年6月6日〜8月30日に開催された通称「嘉麻市レジデンシービエンナーレ」
  レジデンス期間終了後、11月6日と7日に、SHIBAURA HOUSEで成果展を行いました。


  ・主催
  The Future
  ・SHIBAURA HOUSEでの成果展
  The Night Museum
  ・嘉麻市について
  嘉麻市WEBサイト

アーティスト・イン・レジデンスとは、作家たちが衣食住を共にし、創作活動を行う場所でありプロジェクトのこと。ディレクター2人と参加作家のオランダ人4人と日本人3人の計9名が3ヶ月間滞在し、1年前に廃校となった千手小学校は、作家の活動の場になりました。各々教室の1室をアトリエ兼住居として与えられ、毎日給食室で自炊をして皆で食べ、保健室で洗濯をし、手作りのベッドには蚊帳をかけて眠ります。学校の入り口の小さな黒板は、彼らが今やっていること・困っていることが書き込まれ、通った人がなんとなく彼らの近況がわかる手作りのツールになっていました。夜になると近所のおじさんたちが酒盛りにやってきて、みんなで熱く語り合うことも。 


参加作家のAnne Claire de BreijとChristine Massによる楽器のリサーチ

このプロジェクトを企画したのは、以前SHIBAURA HOUSEでワークショプを行ったVincentとKlaraです。自らが千手という土地に幾度となく通い、拠点を移して住み着き、地元の人の考え方を理解する。そうした土壌を作った上で、作家が制作する環境をつくると同時に、地域の問題を一緒に考えたり地域自体に刺激を与えるやり方は、「アートの力で観光・まちおこし」等の近年では聞き慣れた言葉よりも腰が据わっていて共感が持てます。そして想像以上に労力と時間がかかることでもあります。彼らが嘉麻でプロジェクトを立ち上げたのも、地元の方が彼らの考え方に同意し積極的に協力をしてくれたからだといいます。 


The FutureによるIntroduction。滞在中・帰京後のKAMA RADIOの前後でも放映。
 

嘉麻市は2006年に4つの町村が合併してできた新しい地区で、人口は4.4万人程。街道や炭鉱によって栄えた時期もありましたが、現在は目立った産業もありません。都会の喧騒から離れたこの場所は、虫やカエルの声、時折遊びに来る小学生の声がよく響き、人の気配や距離感をより密に感じます。近くの風景を撮影しに行くと、通りかかった初対面のおじさんが周辺の歴史を教えて下さり、1時間くらい立ち話をして去っていくことも。作家自身が地域との関係を作っていく上で、「アーティストであること」よりも、「どんな人間であるか」という性質が前にでているところが、このプロジェクトの面白みのひとつでもあります。千手小学校に集う人たちは皆、飲み仲間や趣味仲間として付き合い、その人の人間性と向き合っていく過程で作品を知ったり制作に関わってくださいました。地域という単位で見ても、合併前の地域への帰属意識が強い印象がありましたが、実際にこのプロジェクトが刺激となり、垣根を越えて住人である自分達が協力して主体的に何かしようという動きも徐々に生まれてきました。人の顔が活き活きするのを見ながら、土地を元気にする「お祭り」に立ち会っているような懐かしさを感じました。 



隔週の休日は英会話教室や地域の方による居酒屋が催され、賑わう

ただ、地域の人の「力になりたい」という気持ちにもバランスが必要だということもわかりました。必要以上に世話を焼いてもらっている状態というのはありがたいけれども、まだ「ゲスト」としての扱いなのかもしれません。熱がある程度冷めて、お互いができる範囲で助け合う信頼関係が作り上げられた時が「住民」として受け入れられた合図なのだと思います。来年以降、このプロジェクトが継続し関係性が変化していくところを見守っていきたいところです。
 

嘉麻から帰ってきて、時差ぼけのように感じたのも、時間の流れ方・音の感じ方の変化や、感覚として一瞬で得る情報量の差を無意識に身体が感じとったからなのかもしれません。現地での成果展を終えて、東京に移動してきたThe Futureともそんなことを話しながら、いよいよSHIBAURA HOUSEでの成果展の準備が始まりました。 
 

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