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The Kama City Residency Biennale (展示)

2015.12.04

BY 元行 まみ

The Night Museum

The Kama City Residency Biennale*の東京での成果展は、The Night Museumー夜の美術館 としてオープンしました。嘉麻から取り寄せたお米のおにぎりや、振る舞い酒もありました。
展示に目を向けると、神楽を舞う3人の踊り手の様子をコマ取りにして再構成した映像作品や幼少期の記憶を思い起こすような絵画、家の建具を模して作られた版画のインスタレーションなどが、夜の風景に浮かび上がります。テラスに照らされているのは、折り紙のように折りたためる木版の船。最上階には、カメラ・オブスクラによって焦点をわざとぼかして映す、焚き火の映像作品。壁に投影した映像が反対側のガラスに反射して、ビル群の中に炎が映っているように見えるのも幻想的でした。


 Recollection / Dirk Smit

Reconsider / 前谷康太郎

* 2015年6月6日〜8月30日に開催された通称「嘉麻市レジデンシービエンナーレ」
  レジデンス期間終了後、11月6日と7日に、SHIBAURA HOUSEで成果展を行いました。

  レジデンス滞在記はこちら

  ・主催
  The Future
  ・SHIBAURA HOUSEでの成果展
  The Night Museum
  ・嘉麻市について
  嘉麻市WEBサイト

The Futureは元々は出版社で、紙による印刷物にとどまらず、サウンド作品やインスタレーションなど、実験的な試みを重ねながら「出版」へとアプローチしています。今回のレジデンスもその試みの一つで、プロジェクトの成果は最終的には出版するそう。東京での展示でも、2人が作業をしていた職員室を再現したキャビネット型の”The Book of Senzu Phase 1 “があったり、作家紹介のボードも本のページを連想させるような構成になっています。 


The Book of Senzu Phese 1 / The Future 

The Futureによる作品展示ツアーにおいて

展示には、参加作家である前谷さんが大阪から、Stevenはオランダから参加してくれました。前谷さんは2日目の展示ツアーを作家目線で、Stevenはアーティスト仲間と共に1Fのガラスにライブペインティングをしました。プログラムはテーマとともに毎時進行していきます。地方と都市というテーマで自身が集めた音を再構築する、ヤマ ユウキさんによるサウンドスケープ作品(tones or sounds, Olegg Lermontov)。そしてTrading Cityの方々は、都市の機能をTrade(トレード)する仕組みを、飲み物のゲームを使って置き換えてみるワークショップを行いました。
 

トークイベント“The Future Talk”

トークイベント“The Future Talk”では、実際にアートプロジェクトに関わっていらっしゃる方や建築家、デザイン関係のお仕事をされている方々をお招きして、議論を行いました。人口が少なく高齢化の一途をたどる地域が増える一方、「アートプロジェクトによる地域再生は可能か?(ー可能ならどのように?不可能ならばなぜ?)」という問いを、3グループに分かれて、3つの立場(地元の人 / アーティスト・外部の人 / 行政)をローテーションさせながら考えるテーブルトークを行いました。テーブルにはそれぞれモデレーターがおり、意見をまとめて3タームごとに発表し、メインモデレーターのJames JackさんとThe Futureの見解や、他のチームの案を踏まえて段階的に考えていきました。

地方の人はそもそも地域を再生する方法としてアートプロジェクトである必要性を感じているのか、外部からの介入を望んでいるのか。行政は文化的な価値より経済効果を優先させる傾向にあるのはなぜか。問題点が並べられていく中で印象的だったのは、レジデンスに参加するタイプのアーティストについて。美術の文脈で見た時の自身のアーティスト像と、地域で求められているアーティスト像の差をいかに埋められるかの器用さでキャリアが決まるという意見でした。特にアートで生計を立てにくい日本では、ある程度の生活が担保される状況での制作は魅力でもあります。サイトスペシフィックな要素をいかに組み込むかというのは、若い世代やアーティストが通る道として考えなければならない課題であるようにも思います。プロジェクトで展示した作品の行方はどうなるのか、地元の人が作家の作品を買うことを考えても面白いのではないか?という意見が出たテーブルもありました。 


出た意見をリアルタイムでタイプしたものが壁に投影されおり、それをふまえて議論を発展させます。

後半では、持続性というキーワードが挙げられました。それぞれの立場が見据えているタイムスパンには大きな差があります。嘉麻を例に出すならば、地元の人は次世代のことを考え、アーティストにとっては滞在期間や展示が一つのノルマであり、行政では担当者のモチベーションや任期によって左右される、など。“滞在期間が過ぎた後に継続していくか” “アートプロジェクトが終わる時はいつなのか” というのも、会場の中では大きな問いとなっていました。地域が個々の記憶において引き継ぐものであり、根付き方にも色々あるので、続けることを良しとするよりは、その中で残るものが文化だという作家の方の言葉が私の中で印象に残っています。 

語り尽くされてきた問いではありますが、改めて問題を整理していく場となりました。色々な切り口から問題点を共有していく中で、新しい考え方を見出すまでのプロセスや、アートプロジェクトに関して本質的なところを掘り下げていくことへの難しさも感じました。

展示を終えて

他の地域で過ごしてみることは、自分が普段過ごす場所を見直すきっかけにもなります。コミュニティのかたちに答えはありません。環境やそこにいる人によって、常にいきもののように変化するものでもあります。
SHIBAURA HOUSEがある芝浦という地域は、近年劇的に変化を遂げた特殊な地域でもあります。土地の開発が行われ、オフィスが多く立ち並ぶようになってから、昼間人口と夜間人口が大幅に変わり、昔から住んでいる人・新しく移住した人・働きに出ている人・働きにくる人など、様々な人が行き交う街です。私たちはコミュニティが生まれるようにしくみをつくったり、活動を助けることはできますが、コミュニティ自体になることはできません。その土地の人が自主的に何かをしようという意識が芽生えた時に、それがコミュニティとなるからです。 

土地を知ろうとするとき、実際に行ってみて、目で見たり耳で聞いたり肌で感じたりしないとわからないことはたくさんあります。本やインターネットで知るよりも、実際に行ってみるか、行ったことのある人の口から聞くことには、案外面白い情報が詰まっていたりします。 

どこに住んでいますか? / どうしてそこに住んでいますか? 
生まれた場所やあなたの故郷と思う場所はどこですか? 
そのまちで、楽しみにしている事ややりたい事はありますか? 

この文章をお読みになっている方で、SHIBAURA HOUSEにお立ち寄りになることがありましたら、そのようなお話を聞かせていただきたいと思っています。

今回展示された作品たちは、アムステルダムでの展示に向けてオランダへ旅立ちました。展示の2日間は、たくさんの方の関わりの中で、実現したイベントです。このプロジェクトの来年以降の展開を楽しみにしつつ、私たちSHIBAURA HOUSEが地域に対して・地方に対して、何ができるかを考えていきたいと思います。ありがとうございました。
 

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