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「デ・コレスポンデント」を迎えて(後編)

2016.07.08

BY 伊東 勝

勉強会における「デ・コレスポンデント日本版をつくる」という仮想のストーリーは、日本のジャーナリズムとメディアを取り巻く状況に対してどのよに対峙していくか、という角度で議論が進みました。ある意味、現在の新聞社とは対極に位置するのがデ・コレスポンデントです。議論の自然な流れとして「日本のメディアに関わる人達にとって、デ・コレスポンデントはどのように受け止められるのか」という点にも興味が湧いてきました。一種のアンチテーゼでありながら、同時に希望にもなり得るのではないか、と。

新聞社で取材を受けるロブ・ワインベルグさん

デ・コレスポンデントの存在を知っている人は業界でもあまり多くありませんでした。したがって、それを確かめるには、オランダからデ・コレスポンデントの人間を招き、日本のメディア関係者と直接会ってもらうことが最も簡単な方法です。以前、アムステルダムで会ったときに、本人達が「ぜひ東京に行ってみたい」と言っていたことも頭にありました。

今回、デ・コレスポンデントから創設者のロブ・ワインベルグさん、デザイナーのヘラルド・ドュニンクさんを招聘できることになったのはオランダ大使館からのサポートに尽きます。オランダの文化領域でいま一番注目されている人間がロブさんということも耳にしました。

今回の来日では一週間の予定で東京に滞在することになりました。SHIBAURA HOUSEでのイベントを中心に、早稲田大学でのレクチャー(大学院政治学研究科ジャーナリズム・コースと報道実務家フォーラムの共催)、さらにその間を縫ってさまざまなメディアの取材を組み込みました。来日して再会したふたりは、やや恰幅が良くなって貫禄(風格?)がついているようでした。

デ・コレスポンデントへの注目

早稲田大学でのレクチャーの様子

早稲田大学では雨にもかかわらず、学生とジャーナリストが100名以上集まり、熱心に彼らのプレゼンテーションに耳を傾けてくれました。プレゼン後も質問が途切れず、ふたりは教室の閉館時間が過ぎるまで参加者に囲まれていました。当日の司会を担当された方は、こんなに熱心に質問が向けられることは今までにありませんよ、と笑いながら話してくれました。

終了後、本人達も参加者からの前向きな反応をもらうことができて良かったと言っていました。参加してくれた皆さんに大きな刺激とインパクトを残してくれたように思います。また、早稲田大学のイベント運営は準備から当日の通訳まで学生の皆さんが担当し、素晴らしい成果に繋げてくれたこともここで付け加えておきます。

帰国前日に開催されたSHIBAURA HOUSEでのイベントは6時間の長丁場。参加者はクリエイティブ、メディア関係者が中心でした。14時からスタートし、デ・コレスポンデントのプレゼンテーションをベースに、テーマごとにディスカッションを展開。Facebookのマーク・ザッカーバーグへのメッセージ(アルゴリズムの濫用がジャーナリズムの脅威になること)、記者と読者によるコメント欄(彼らは“コントリビューション = 貢献”と呼んでいる)の運営など、そのビジョンとスタンスが良く伝わる内容でした。

その後、スタッフ手作りのオランダ料理の夕食を挟んで後半の部に。ここでは日本でメディアに関わりながら活動する3組(greenz、マチノコト、朝日新聞メディアラボ)にショートプレゼンテーションを行ってもらいました。各々挙げてくれたトピックに対し、ロブさん達からのコメントを交えて進行。終了は20時。6時間という長さでしたが、それを感じることなく、中身のあるイベントになったと思います。

SHIBAURA HOUSEでは参加者によるプレゼンテーションも行われました

彼らの滞在中、新聞社の記者の方々と話す機会が多くありました。なかでも、ある大手新聞社での取材後、記者の方に「ぜひ彼らのことを記事にしてください」と頼んだところ、「デ・コレスポンデントのことを記事にすると、うち(=新聞社)ができていないことを羅列する記事になってしまいますよ」と苦笑いしていたのが印象的でした。イベントや取材にあたってくれたほとんどの記者の方が、デ・コレスポンデントのビジョンや独自の運営方法に興味をもってくれたようでした。こんなことが実践できて羨ましい、素晴らしいメディアですね、と言ってくれた方も多くいました。

同時に、新聞社に所属する方々は、”デ・コレスポンデントのようなこと”を実現するためには多くの困難があることも話してくれました。それはやはり、社内論理とリスクヘッジ、マネタイズという現実的なレベルの話でした。言うまでもなく、日本の新聞社は数十年の歴史をもっています。「紙の新聞」によって築いてきた事業規模は大手新聞社でそれぞれ数千億規模と、相当な数字になります(SHIBAURA HOUSEの母体である広告製版社も60年以上に渡ってそれに関わる仕事をしてきました)。聞けば聞くほど、新しいことにチャレンジするには難しい環境があるように感じます。でも彼らも同じようにそれを突破したのだと思います。明確なビジョンと強い覚悟をもって。今回の招聘を通して私達自身、そのことを最も学びました。

今回の彼らの来日がこれからの日本のメディアを考えるうえで、ほんの少しでもプラスになれば嬉しく思います。私達も引き続き、彼らを含めたメディアの動向や社会のあり方を考えていくつもりです。

 

*イベント当日の様子は参加者、新聞社の皆さんが記事にしてくれています。またロブさん、ヘラルドさんによる東京滞在記も後日書かれるとのこと。

平和博さんによる記事(http://www.huffingtonpost.jp/kazuhiro-taira/correspondent_b_10562884.html)  

毎日新聞による記事(http://mainichi.jp/articles/20160627/ddm/004/030/029000c)

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