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デ・コレスポンデントから学んだ新たなジャーナリズムのかたち 
〜2つのイベントを終えて〜

2016.07.21

BY 新井彬央・玉越啓太(早稲田大学政治経済学部田中幹人ゼミ) 

クラウドファンディングによって8日間で1億円を集めたオンラインジャーナリズム「デ・コレスポンデント(De Correspondent)」。斜陽化が叫ばれるジャーナリズムの世界で、経済的成功のみならず、記事のクオリティと美しいデザインを調和させ、世界の注目を浴びています。その創設者であるロブ・ワインベルグ氏とデザイナーのヘラルド・ドュニンク氏を東京に招聘しました。

2016年6月13日には、オランダ大使館にて講演会とレセプション・パーティを、そして6月16日には早稲田大学で「オランダ発『デ・コレスポンデント』が示す参加型ジャーナリズムのかたち」と題し、多くの聴衆を集めてシンポジウムを開催しました。これらのイベントの模様をお伝えします。


オランダ大使館での講演会の様子

デ・コレスポンデントのお二人を迎えてのレセプションは、小雨に濡れる青葉に囲まれたオランダ大使館で開かれました。お二人の講演とパーティーに先立ち、早稲田大学政治経済学部の田中幹人ゼミの学生たちがプレゼンテーションを行いました。

学生たちは、日頃のジャーナリズム研究の成果を踏まえ、オランダと日本のメディアの比較、そして日本におけるウェブメディアの現状を報告しました。報告の中では、日本の新聞のルーツはオランダからもたらされたこと、現代ではオランダに比較して、日本は新聞購読率こそ高いもののタブレット保有率が低いことなどがデータと共に挙げられました。また、日本はソーシャルメディアをきっかけにニュースが閲覧されているが、インターネットメディアはニュースよりは「娯楽」という形で消費されている現状を指摘しました。したがって、人々の生活に適合する新しいニュースメディアが必要とされている、と結論づけ、学生たちはデ・コレスポンデントの講演にバトンを繋ぎました。


早稲田大学で行われたシンポジウム

オランダ大使館でのレセプションから2日後。早稲田大学で現役ジャーナリストから学生、一般市民まで、100名以上の聴衆を集めてシンポジウムが開催されました。デ・コレスポンデントのお二人の語り口は軽妙そのもの。サイトのデザインを踏襲し、アニメーションをふんだんに使ったスライドを背景に、デ・コレスポンデントの活動を支える哲学について熱く語り、聴衆を魅了しました。

ロブさんとヘラルドさんは人々が期待するものを報道する「センセーショナル」な従来のメディア形式ではなく、私たちの世界を構成する規則や法則の土台を築く「ファウンデーショナル」なニュースを報道したい、という理念を掲げています。それを実現するために、広告収入に頼らず読者からの資金提供によって、収益を上げるクラウドファンディングの手法を利用し、成功を収めました。また、従来のニュースは記者から受け手側への一方通行で行われていましたが、デ・コレスポンデントは読者を“貢献者”として捉え直すことで、記者と読者の双方向のコミュニケーションを可能にしたのです。


編集長のロブ・ワインベルグさん

ロブさんとヘラルドさんの二人は、息の合った掛け合いのなかで、時折、冗談を交えた講演を進めていきました。英語での講演ということもあってか、始まる前の会場は緊張感に溢れた雰囲気でしたが、次第に柔らかなものへと変化していきました。

イベントではたくさんの質問が投げかけられました。たとえば、どのようにしてクラウドファンディングに成功したかという質問に対しては、「ニュースに対する斬新かつ明確な考えと、またそれに対して多くのメディアが関心を示したことによって資金を集めることに成功した」と答えていました。
また、一日の記事数はいくらかという質問に対しては、「一日に5記事」と答えたうえで、「それでもまだ多い。ほとんどの読者は1つか2つの記事を読むにすぎない」と続けました。量よりも質、情報配信よりもコミュニケーションを通じた深い議論を重視する、デ・コレスポンデントの哲学が垣間見えた瞬間でした。

質問は引きも切らず、イベントは長時間にわたりましたが、お二人は最後まで真摯に答え続け、会場全体が真剣に新しい参加型ジャーナリズムの可能性に関して考えを巡らせる時間が過ぎていきました。

会場からも熱心な質問がたくさん出ました

イベント終了後のアンケートには、参加者から様々な意見が寄せられました。残念ながら、日本では有料で情報を買うという意識が低いので広まらないのではないだろうかという意見が多く見受けられました。しかしその反面、現状のメディアのままでは衰退する一方なので、一部の情報感度の高い有識者層は興味を持つだろう、と支持する声もありました。また、世間が興味を持つためにはデザインによって購買意欲をかきたてる必要性があると述べる方もいました。
いずれにせよ、デ・コレスポンデントのお二人の熱意は、これからの日本のメディアの新しい可能性を考えるきっかけをもたらしたようです。

〜イベントを終えて〜
今回は、私たち早稲田大学政治経済学部・田中ゼミが、イベントの運営に携わらせて頂きました。不慣れなことも多く、苦労もそれなりにありましたが、無事に成功裏に終了したことでほっとしております。
それ以上に、斬新なデザインと仕組みによって人々を惹き付け続けているデ・コレスポンデント、そしてそれを駆動しているロブさん、ヘラルドさんの一本筋の通った哲学には、多くの刺激を頂きました。

読者の「コメント」を「貢献」と読み替えることから始め、ジャーナリズムの革新的な地平を切り開いていく—その思想とアーキテクチャが一体となった活動の在り方は、私たちがこれからの学びを通じて考えていくべき、大きな宿題を頂いた心持ちです。

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