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まちで出会い、みんなでつくる“わいわいカレーキッチン”

2016.10.17

BY 韓 亜由美

10月13日(木)

季節外れの台風や雨模様の1週間のあと、さわやかな秋風とともに「わいわいカレーキッチン」いよいよキックオフの日を迎えました。

芝浦3丁目、ひときわ目立つ街角のガラス張りの建築で、いつもその向こうに笑顔の人が見え隠れするオープンなたたずまいは、すっかり地域の拠点になったSHIBAURA HOUSE。「わいわいカレーキッチン」は、外の通りからもよく見えるそのオープンキッチンが舞台です。いつもは大人中心で埋もれがちな都会に住む小中学生や子ども達を主役に誘い出し、本格的スパイスや旬の食材を使ったカレー作りを通した、まちのみんなの肩肘張らない異文化?コミュニケーションのためのプロジェクトです。いわゆるイベントやワークショップとも違い、目に見える結果を求めず、共有する時間や居心地を大切にした“ゆるい”共感のアプローチが特徴です。

また、わいわいカレーキッチンの初回キックオフということで、“旅するカレー、つながるカレー”をキーワードに、全国各地56箇所でカレー作りの実績(今回のSHIBAURA HOUSEは57回目!)ある「カレーキャラバン」の御三方に応援に駆けつけていただきました。"わいわいカレー"のプロジェクトは、一期一会の場作りの大先輩である「カレーキャラバン」に多くの示唆を受けて生まれました。


カレーキャラバンのテント。全国各地を訪問しながら、いつもは野外にテントをたててカレーを仕込みます。

10:00

当日は、ムングダール(緑豆)やトマト、オクラをベースにしたベジタリアンなランチカレーと、和牛のタンモトと旬の野菜を煮込むディナーカレーの2種類のレシピで、全部で130人分を時間差で仕込む予定でした。ホスト役メンバーの中学生と大人、サポート役のSHIBAURA HOUSEのLOCALIST OFFICE、お互いの顔合わせと自己紹介をした後、まずは50個のタマネギの皮むき、みじん切りなど下準備から取りかかりました。

ランチカレーの料理番は、個性的でゆっくりマイペースだけどピュアなハートの持ち主のスペシャルなみんな、港区立港南中学校e組の生徒さん12名です。(うち3名は残念ながら欠席)今回は、校外学習として1年生から3年生までの全員参加の活動として一歩を踏み出しました。

山のようなタマネギのみじん切りは、通りに向かってズラッと横一列に並んで、みんなで一斉に取り組みました。眼から涙を流しながらも交替で取り組み、しっかり細かく仕上りました。それをきつね色になるまでソテーしたり、豆の下煮のアク取りにも丁寧に取り組みました。そして、いよいよ大鍋で全量を煮込む直前、マスタードシードやクミンシード等のスパイスを炒る段になると、パチパチという音と芳しいスパイスの香りが建物全体に充満し、大ガラス扉を開放した歩道にまで溢れ出しました。すると、足早に通りすぎていた人々が立ち止まり、クンクンと中をのぞき込んでいるではありませんか!スパイスの芳香は、嗅覚を通してe組のみんなの調理にいそしむ姿とともに、道行く人にわいわいカレーのメッセージを饒舌に伝えてくれました。




丁寧に玉ねぎをみじん切りにする、港区立港南中学校e組の生徒さん

13:00

みんなで味見しながら「これでOK!」と、心意気を仕上げに加え、予定通りの時間に完成したムングダールカレーはターメリックの黄金色が美しく、ジャスミンライスに添えて、とっても優しく滋味あふれる一皿に結実しました。〜インドでは豆カレー(ダール)は日本の一汁一菜における、いわばお味噌汁の位置づけです。ヒンズー教徒は菜食が基本ですから、そこに一菜:漬け物や生野菜を添えたのが普段の食事です〜

腕をふるったe組のみんなは、予定を縫って来ていただいた港南中の校長先生、見守り役の担任の先生方と一緒に和やかに食卓を囲みました。もちろん、フロア内で屋台をセッティング中のカレーキャラバン、居合わせた常連の方々、たまたま訪れた人、LOCALISTのメンバーも、思い思いに優しいムングダールカレーを味わっていました。その光景は空腹を満たす昼食というよりは、まちの広場で大人も子どもも大鍋を中心に、慈しみを仲間でシェアする平和な儀式のようにも見えました。


ムングダールカレーが完成しました!

14:30

港南中e組の生徒達は、家庭科室で事前学習をしていたこともあり、手際も良くゴミ一つ残さず、余裕の料理番ぶりで、サポート役の大人達は感心しきりでした。最後はローカリスト代表から感謝とお褒めの言葉をいただいて、いつもの保護者や学校の先生方とは違う、地域の大人に認めてもらえたことで、ひとつの社会体験として大きな達成感と自信をつけて帰ることができたはずです。

15:00

そして引き続き、キャラバンテントを設営完了したカレーキャラバンメンバーによる、いわば真打ちのディナーカレーです。メンバーのお三方:木村亜維子さん、木村健世さん、加藤文俊さんは、いつものようにゆったりとしたペースで、しかしながら抜群のチームワークで着々とディナーカレーの仕込みが進んで行きました。

10/10の休日に、就農体験企画“わいわいファーム”の参加者が葉山の畑で収穫したばかりの有機無農薬野菜:冬瓜、茄子、バターナッツ、新しょうが、そして近所の焼き肉店:ガーデンたまちに仕入れてもらった新鮮な和牛のタンモトが主な具材です。しかしそれだけではありません。本格的な薫り高く複雑なスパイスの配合はもちろんのこと、何よりもこれまでの56回のカレー作りの経験から生まれた「秘密の隠し味」が次々と投入されるのには目を見張りました。例えば、レモンやオレンジ柑橘系の表皮や絞り汁、バナナ、洋酒、ダークチョコレート、青唐辛子味噌、ヨーグルト、など。それぞれの隠し味は、いつどこの回で見出し、どんな役割を演じるのか?記憶をたどりながら、加藤さん木村さんから語られる各地での活動風景は、複雑に変化する鍋から立ち上る香りの向こうにある、遠く日本列島各地への旅情を誘われました。


カレーキャラバンの加藤文俊さん(左)と、わいわいカレーキッチン発起人の韓亜由美さん(右)

16:00前〜日没

ディナーカレーは大鍋満杯が2つ、ざっと90食分がコトコトと煮込まれていました。まだ、お手伝いを買って出た人の方が多いくらいで、チラホラとしか人が居ないのを見て、加藤さんが「こんなに大量に出来て余らないかなあ?」と心配顔でした。

ところが、外の夕景が暗転して、キャラバンテントのぐるりに吊り下げられた提灯風の照明が温かく浮かび上がる時間帯にさしかかると、カレーの良い香りに誘われるように続々と人が集まって来ました。特に幼稚園帰りの子ども連れのママ達。港南小のわかば学級の子どもと親御さん、ヘルパーさんと利用者さん、学生さん、通りすがりの方、ご近所さん、キャラバン隊の追っかけさん。あれよあれよと、気づいてみれば、シバウラハウスは、まるでコンサート帰りかのような大賑わいに!


スパイスが香る深い味わいの"ギュギュッとしばうらハウスカレー"


SHIBAURA HOUSEの外には、カレーを待つ人の行列が!

18:00頃〜

予定より少し遅く、集まったみなさんに、給食の要領で、屋台の前を先頭に建物の外周にお並びいただきました。キャラバン隊のご挨拶を合図に「ギュギュッとしばうらハウスカレー」と命名された特別仕立てのディナーカレーは飛ぶように配られていきました。

「スパイシー!辛い〜!」と言いながら完食し、お代わりする小さい子たちが続出。ビーフの旨みと贅沢なスパイス使い、隠し味の利いたカレーには不思議な引力が秘められているようでした。大人達も「こんなに美味しいカレー生まれて初めて食べた!」「病みつきになりそう!」などと、みんな顔を見合わせ口々に感想を述べあいながら少々興奮気味。小さな子ども達が大勢いたのに、ザワザワとした騒がしさは全く無く、子どもも大人も、立場を超えてひとつ鍋のカレーをシェアし味わう連帯感、共感の中に居たからでしょうか。シバウラハウスの中は“カレーマジック”とでも言うべき熱気にすっぽりと包まれて、鍋はあっという間に空になりましたが、何か充ちたりた余韻が長く尾を引いていました。

何人もの方に「カレーキッチン、次はいつやるんですか?」と聞かれました。e組の女子生徒達は、目を輝かせて「すごく楽しかった!夕方のカレーにも来たいからママに聞いてみる!」と。みんなが大好きなカレーは、色々なバリアを超えて、コミュニケーションの化学反応を起こす触媒なのです。

都市のコンクリートジャングルで、いつも学校や塾では先生に、放課後は保護者に、外敵から護られている子ども達を、同じまちに住む顔の見える仲間として地域社会にデビューさせる。それは容易なことではありません。まだほんの入口に立てたばかりです。けれど、多様性と、違いを互いに認め合えるインクルーシブな環境があるほど、まちとして魅力を増して行くのだと思います。直接出会う、そこからしか、人間どうしの信頼関係は醸成できません。都市の真ん中の"パブリックスペース""まちの広場"として、SHIBAURA HOUSEという「場」の可能性を生かした計画に育ててゆきたいと思います。


わいわいカレーキッチンでつくった、缶バッジ。お豆とスパイスのキャラクターです

まだこれから、次々と高層ビルが垂直に伸びてゆき視界を埋めてゆく芝浦の街並み。けれど運河の水路はどこまでも水平に延びて海へつながっている。運河の上は風が自由に流れて空を邪魔しない。そんな地域で、大人は社会での垂直の上着を脱いで、水平にひろがりある地平で、子ども達と同じ高さの目線になって見てみよう。互いに言葉を交わして名前を聞いて、顔見知りになって、人間どうし、まちの仲間として、水平なやりとりが生まれるようなきっかけがほしい。自分たちの住むまちの中にそんな陽だまりのように温かな居心地の良い場所がほしい。そんな思いで“わいわいカレーキッチン”は出発しました。

2016年10月 港区芝浦にて。
わいわいカレーキッチン発起人/まちの陽だまりプロジェクト代表
韓 亜由美

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