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De Correspondent 滞在記


2016.07.30

BY 柴田直美


2016年6月12日
アムステルダムから成田空港に到着。無事に着いていることをメールで確認。
彼らの来日は2度目。過去にそれぞれ観光で一度来たことがあるとのこと

2016年6月13日
一日中、雨天。約束の11時にホテルのロビーで待っていると、外から戻って来た2人。「オランダの天気みたいだね」と言いながら、オランダ大使館関係者との昼食に向かうために地下鉄の駅へ。彼らのためにPASMOを購入している途中、「記名にしたい?」と聞こうと振り返ると2人とも真剣にスマートフォンを見つめている。以降、移動中はほとんどスマートフォンで仕事をしていた。「インターネットにつながるの?」と聞くと、モバイルルータを持ってると。。。



オランダ大使館関係者との昼食のあとは講談社へ。時差ぼけで朝まで眠れなかったロブと、熟睡してロブにモーニングコールをかけてあげたハラルド。共通の知り合いだったジャーナリストに紹介されて、意気投合したという2人は、ビジネス上のパートナーというだけでなく、仲の良い友人関係がベースのようだ。


講談社では現代ビジネス編集部を訪ねる。
今回の来日では、日本のオンラインメディアで働く人々と会いたい、できれば彼らが働く場所を見たいというリクエストがあった。護国寺駅前にそびえる講談社社屋を見上げながら、過去にデ・コレスポンデントについての記事を書いて頂いていた佐藤慶一さんにお会いして、編集部内をご案内頂く。オンラインメディアの編集部だからか、積み上げられた紙の資料の山がほとんど見当たらない。




編集部内にある畳敷きのスペースにて着席し、瀬尾さんも交えて意見交換。日本語と同じく、話者が少ないオランダ語という言語でのメディアということで興味があった、とのこと。2016年3月に紙の月刊誌刊行からウェブ(スマートフォン/タブレット/PC)ベースの会員制コンテンツサービスに移行したクーリエ・ジャポンを例にどうやって読者を獲得するかなど意見交換。すぐに忘れ去られて行くような新しいだけが価値のニュースは扱わないで、もっと日常的な問題を扱う、デ・コレスポンデントを立ち上げたきっかけについて話す。哲学とジャーナリズム、この対照的な2つは、お互いに学び合えると思っていたロブに契機が訪れた。オランダの日刊経済紙「nrc.next」の編集長だったときに、「Avoid the News(世界を知るためにニュースは不要)」という記事を誌面のほとんどを使って掲載。これがきっかけで編集長をクビになったが、共感してくれた人も多かったので、「哲学」が背景にあるジャーナリズムをつくれると確信したという。

続いて訪ねたワイアード編集部の宮本裕人さんはデ・コレスポンデントの立ち上げから注目し、たびたび自身のブログで記事化。既に予備知識は充分なインタヴューは、生い立ちにまで遡り、解き明かそうとするもの。ロブの親は2人とも心理学者。母親からは「口から生まれて来た」と言われる程、よくしゃべる子どもで「WHY? 」を繰り返していたそう。

そのまま、オランダ大使館で行われるメディア懇親会へ向かう。早稲田大学大学院ジャーナリズムコースの学生さんから、日本のオンラインメディアの状況についてプレゼンして頂いた後、彼らのプレゼン。数多くのメデイア関係者の方々が集まった会場からは質問が続き、盛会にて終了。「おなかが減って倒れそう」という彼らと和食屋で食事。


2016年6月14日
日経新聞社でのインタヴュー。
厳重なセキュリティーが敷かれた社内に驚きながら、エレベーターを乗継ぎ、フロアへ。牛込俊介さんにご案内頂いたメディア戦略部は、日経の保有するデータ資産やデータ収集力・取材力とデザイナーやエンジニアがもつ表現力・技術力を兼ね備え、日本経済新聞 電子版での評判となった分かりやすいインフォグラフィックも手がけている。



案内された会議室で皇居外苑を見晴らす絶景を背に取材を受け、「この話はまず社内の多くの人と共有したい」と、デ・コレスポンデントの取り組みが、現役の記者の皆さんにも刺激になったよう。日経電子版のイメージキャラクター「デンシバ」のステッカーをもらったハラルドはめざとくぬいぐるみも見つけおねだり。「オランダ色」の犬にご満悦。



デ・コレスポンデントのオフィスに置いて写真を撮って送る約束をして、次の訪問先のgreenzへ。少し時間があったので、日経新聞社があったオフィス街の大手町と違うエリアを案内しようと、最寄りの原宿駅からではなく、表参道駅から裏通りを通って、神宮前方面へ。途中のオープンカフェを見ながら、「このあたり雰囲気がいいね」と気に入った様子。『どういう人がこのあたりに住んでるの?』と聞かれている脇を、高級車が通り抜け、『ああいう車に乗れる人かな』と言うと納得。アムステルダムでも観光地化が進む中心部にはほとんど住めない。

最近、リノベーションをしたばかりというgreenzのオフィスは、日経新聞社とはうってかわって解放的。コントリビューターとのやりとりは、人間が知識の共有によって賢くなって来たことに重なる、というロブ。コレスポンデント(記者)は、ロブが面接して選んでいるが、そのときにカンバセーション・リーダーとしての資質を見るという。まず、コントリビューター(コメント寄稿者)とのインタラクティブなやりとりに興味があること。コレスポンデントの仕事の大半がコントリビューターとのやりとりである。つぎにジャーナリズムを勉強していないこと。ニュースではなく、日常の中の問題、読者にとっても身近な問題を取り上げる。実際にコレスポンデントの中には、学校で先生をしながら記事を書いている人もいるという。コレスポンデントを選ぶ時にその人自身がおもしろい視点をもっているかどうかが重要であり、学歴はまったくあてにならない。雇用されるときにそれぞれの「専門性」を決めて、それについて書いている限りは、何を書くかは自主性に任せているとのこと。とはいえ、コレスポンデントの平均年齢が20代後半という若い組織でのロブの仕事は、くりかえし「会社の哲学」を伝えること。すべきことを言うのではなく、「なぜ」を考えさせて人材を育てる。




翌日、自転車でツーリングするハラルドのために千駄ヶ谷のサイクルショップへ。オランダでの休日も自転車でツーリング。走ったルートはGPSで記録のうえ、世界のサイクリストたちとシェアしているそう。




2016年6月15日
一日オフ。ハラルドは早朝から多摩方面へ自転車ででかけたそう。ちなみにロブは自転車に乗るのは嫌いとのこと。


2016年6月16日
早稲田大学でのレクチャーに向かう前に、駅で待ち合わせをしたが、「今、ここのカフェにいるから来てほしい」と連絡があり。行ってみるとロブは熟睡中。時差ぼけが直らないらしく、朝まで寝付けないとのこと。レクチャー終了の21時までのエネルギー源としてライスバーガー(グルテン/乳糖/卵アレルギーのハラルドにも食べられるファストフード)を手渡してみると、「rijst broodje!(rice bread)」といってほおばっていた。こちらでも質問がひっきりなしに上がり、終了後も質問する人に取り囲まれる。



彼らは今でも「哲学」に共感してクラウドファウンディングを通してサポートしてくれた人に敬意を払っている。同情して寄附してもらう「Please help us」といった文句ではなく、「Co-creat with us」という姿勢を崩さない。定期購読にしても「Buy the subscription」ではなく「Support our journalism」。ディスカウントをしないと決めたのもそのため。オランダ大使館のバス・ヴァルクスから立ち上げの時のクラウドファウンディングに参加したと聞かされたときは、本当に嬉しかったと語る。最初にアイデアだけで何もなかった自分たちに投資してくれた人々に誠実であるために、クオリティを保つのは使命として全力でとりくんでいるとハラルド。
では定期購読料以外の収入はというと、コレスポンデントたちの記事をまとめた書籍の販売やレクチャーも収入源である。広告を打たないので、購読者層の分析などのマーケティングも不要であり、実際のところ把握していない。


2016年6月17日
一日オフ。明治神宮の森を歩き、近くのオープンカフェで仕事をしていたとのこと。


2016年6月18日
朝日新聞社でのインタヴュー。どうしたら社内の人々の意識を変えられるかという質問に対して、「簡単だよ、新しいオフィスに引っ越すんだよ」というハラルド。決して軽はずみな発言というわけではなく、「環境が変われば、人々も『あ、何か新しいことが起きるんだな』とわかるはず」と。最近、de correspondentには、CHOという役職が数ヶ月前にできたという。Chief Happiness Officerの略称で、従業員がベストの状態で働けるような環境を作るのが仕事。具体的には、年金の相談、ランチの内容、就業時間や場所、健康問題まで含め、相談に乗るとのこと。良いと思ったことはどんどん取り入れる。そういった軽やかさも彼らの特長かもしれない。



また、デ・コレスポンデントが未来のジャーナリズムの正解だという気はさらさらなく、ジャーナリズムにはいろいろな種類や方向性があっていい。という。メディアの影響力というものを考えたとき、何人の人が読んだかということや「いいね」の数ではなく、誰に届いたかということを考えるべき、とも。例えば、200人の議員が読んで、彼らの意識が変わって法律が変わったとしたら、その影響力は計り知れない。



スロージャーナリズムという響きが嫌いと言う。確かにスローという響きは彼らにはあわない。めまぐるしく仕事をするのが楽しくてしかたがないという2人。手応えもしっかり感じつつ、気が抜けない時期であるという自覚もあるのだろう。本当にしたい仕事をする人が増えると世の中は明るくなるよ、と言われたような気がしているが、言葉として聞いたのではなく、この数日を通して彼らから受け取ったメッセージだったのかもしれない。

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