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台北の芝生革命

2015.05.22

BY 方 尹萍(Yin-Ping FANG)

公園は誰のもの?

公園は政府のもの?それとも市民のもの?

このような疑問は今まで台湾の人々は考えたことはなかった。芝生の上の「踏込禁止」は、台北市の公園で良く見かけるサインだ。公園管理の目線からルールを設定することは当たり前だが、公園の存在は市民のためにあるのではないかと改めて議論するべきだろう。

公園は目で見て通るだけの存在で良いのか?狭い住宅を強いられる都市のなかで、幸福感をどのように増やすことができるのか?色々な疑問は社会や都市の在り方につながっていく。

台北ピクニッククラブのストーリー

物語はある日の偶然のアイディアから始まる。台北ピク二ッククラブの創立者Daveさんは、2008年に台北市最大の公園「大安森林公園」で友人とピクニックをしていた。その日は日曜日。広い公園の中に、芝生の上に座っている人はDaveさん達しかいなかった。

台北市民たちは”芝生”にあまり親しみがなく、通り過ぎる人達も異常な目線でDaveさん達を眺めていた。そこで台北でピクニック文化を宣伝するために、イベントを行うことを考えた。まずは2009年に台北華山文創園区がオープンするタイミングで、台北都市ピクニック活動を実施。その日の参加者は3,000人を超えて、その後から台北市内にピクニックをする人たちの姿が増え始めた。

翌年、Daveさんはイギリス・ロンドンに留学し、Charlie、Pheebs、Ting、Irisなどの親友と知り合った。イギリスはピクニック発祥の地。ピクニックは国民文化であり、完全に異なるピクニック体験に刺激を受けた。そこには生活感が溢れ、クリエイティブな実践方法にも驚くものがあった。Daveさんと親友たちは卒業して台湾に戻ったら、それぞれの仕事場に入り、毎日朝から晩までのサラリーマン生活を迎える。ロンドンでの生活を懐かしみながら、台北で面白いピクニックを計画することを決意した。

台北にある彼らのグループは「芝生の上でピクニックしましょう」と宣言して始まった。そして人と緑の関係は、もっと生活と一緒にあるべきだと語った。そのグループを「台北ピクニッククラブ」と命名し、運営理念を「Make the city our playground」と決めた。

そして各種イベントやプロモーションを行なって、台北市民が抱くパブリックスペースに対するイメージを変え、もっと関心を持ってもらえるように活動した。手始めに簡単なピクニックの実施、そして近所の公園や芝生探しといったところから取り組んだ。やがて芝生を使用禁止することはおかしいルールであることを発見した。

週末は緑がある公園に行き、芝生の上に座り、簡単な料理を用意する。そのようなライフスタイルが都市内に少しずつ拡がり始めた。2009年に初めて都市の規模でのピクニック活動を開催して3,000人が参加。それ以来、台北市の市民は意識的に都市内の色々な公園への侵入を開始した。

2014年には正式に「台北ピクニッククラブ」を設立。ピクニックを通して、芝生の上での新たなムーブメントを提案した。やがて台北市政府の都市計画部門と協力したり、東京や香港のピクッニククラブとの交流イベントも行った。

東京のピクニッククラブの設立者は建築家でもあり、世界のピクニックセットを一番集めている達人でもある(太田浩史さん)。国の違いはあれ、ピクニックフードやマナーといった文化を台北市民に伝えた。ピクニック活動はただピクニックをするだけではなく、社会の仕組みや繋がりを学ぶ場でもある。芝生の上は、台北市民と政府の微妙な関係性のなかで、もっとも曖昧でユーモアのあるスペースだと感じられるようになった。

「台北ピクニッククラブ」の影響力

Daveさん達は、さらにヨーロッパの生活や東京のピクニックなどの良さを取り入れた。しばらくして台北らしい豊かなピクニックのスタイルがブームとなって拡がっていった。夜のピクニックはフランスのピクニック映画をテーマとして、広い緑の芝生の上で映画を上映。週末の夜はゆったりと、用意した料理を食べながら映画を観ること。ピクニックは昼間だけという印象を覆して、新しい生活スタイルを誕生させた。 

フードは健康的で軽いものから始めよう。ピクニックの料理は手に持ちやすく、皆で食べやすくすることが基本。一般的な中華料理や台湾料理より、もっとシンプルなものを用意しなくてはいけない。現在ではピクニックに似合うメニューも誕生している。「台北ピクニッククラブ」のパワーは台北の市民に強い影響を与えた。様々な企業が積極的にピクニックイベントのスポンサーになったり、メディアからのインタビュー依頼も増加。テレビにも登場した。

斬新なアイディアは「音楽 &ピクニック」。これはアンダーグラウンドなバンドが公園でのデビューチャンスを獲得する仕組みだ。人々はピクニックをしながら、ライブで音楽が聴けるし、バンドもピクニックに合う曲を選択した。幸せなピクニックタイムが人々に深い印象を残した。

そこに参加した人々は平日の昼間に仕事をしながらピクニックの良い時間を思い出す。Spotifyというネットラジオのサービスがあって、Daveさんはこのネットラジオで「台北ピクニッククラブ音楽チャンネル」を作り始めた。今度の週末はどんなバンドがピクニックにやって来るのか?どんな曲が流れるのか? 登場するバンドの音楽が平日に聴けるようになって、ピクニック好きな人たちは週末までの時間を期待しながら楽しむことができる。

屋上でのピクニック

台北でピクニックの多様性は台北の市民を興奮させながら、いつも新しいアイディアに溢れている。現在、市民は芝生の上に座ることには違和感がなく、ピクニック好きな人たちが多くなった。2015年の3月には台北で巨大な『明日音楽祭』と協力し、また實踐大学の建築学部の作品を借りて、芝生の上にもっと色々なピクニックのスタイルを開発していく。

4月のユニークなチャレンジは屋上でのピクニックイベントで、空き地として放棄されている屋上に新しい見方や使い方を発見した。市民に都市空間へのイメージを転換させていこう。それが「台北ピクニッククラブ」の精神である。

 

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