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ダーン・ローズガールデのアプローチ

2015.05.21

BY 伊東 勝

SHIBAURA HOUSEとオランダ大使館が共同で招聘したダーン・ローズガールデ。今回の滞在はわずか3日間。東京と名古屋でレクチャーをこなし、季節外れの台風のように去っていきました。

彼はいま日本でも、とあるプロジェクトの依頼を受けていると言います。すでにオランダで実現したものを日本でもアレンジして作るそうです。彼の作り出すものは日本人にとってどのように映るのか。あえてそのようなフィルターを通して、感じたことを書きたいと思います。

ダーン・ローズガールデを招聘したイベント「Innovate the Future」。5/14は名古屋大学、5/16はSHIBAURA HOUSEでレクチャーを実施

ダーンは自らのプロジェクトを表現するときに「techno poetry(技術の詩)」という言葉を使います。彼のようなスタイルで活動する人はなかなか日本で思い当たりませんが、しいて言えば都市のインフラレベルにまでスケールアップしたメディアアートかもしれません。

作品はとてもシンプル。場所や文脈にふさわしい明快なストーリー、描き出す美しい情景、それを実現するための技術的な仕組み。未来を予感させるエレガントな情景として日常空間に現れます。

今回本人と話して改めて感じたのは、彼の抱くクリアなビジョンと使命感です(さらに多少の楽観主義も)。彼はレクチャーでも語っていたように「世界のシステムが崩壊した後、なにを新たにデザインするのか」というテーマを自らに課しているのです。そのような壮大なテーマをもって活動することは日本ではなかなか考えにくいでしょう。

私達がメディアアートというフィルターを通して見るとき、どちらかといえばテクノロジーを着眼点として捉える傾向があると思います。その作品のなかにどの程度新しい技術が込められているのか、という視点です。

一方、ダーンの作品を眺めると、さほど難しい技術を用いていないためにチープな印象を受けるかもしれません。「スマートハイウェイ」の塗料や他の作品で使われているLEDなどは一般的なのものとは異なるようですが、原理的には特別なものとも感じられません。

彼は今回のレクチャーでプロジェクトを説明する際、「ローテク」という単語を何度か使いました(しかも誇らしい表情で)。そのことから察しても、彼は技術にプライドをもっているわけではないようにみえます。追求するのは文脈としての必然性やパッケージとしての完成度。彼の描くアイディアがローテクで実現できるのであれば、それで充分。この割り切った感覚はむしろ新鮮に感じました。
 

表現としての叙情性、技術の収め方という点では、メディアアーティストのクワクボリョウタさんが近いかもしれません

WATERLICHT(2015)

ダーンの最新作は国立美術館前の広場で実施された巨大なインスタレーションです。アムステルダムという土地がもつ「海抜以下」という歴史的事実をテーマに、見えない「海面」を蒸気とプロジェクションで可視化したものです。皆が当たり前に知っていることを、視点を変えて現出させる。これ以上ないほどの明快な説得力。こうしたストーリーテリングの妙もダーンが得意とするところです。

来日3日前にスタートしたこの作品。数日間の設置予定であったものの、一日に6万人を超える訪問者を集め、大きな話題となったようです。その様子が気になったのか、ダーンは日本に到着してからも落ち着きなくメールをチェックしていました。

この大掛かりなインスタレーションの実現にどのぐらいの準備期間をかけたのかと質問すると、「2週間だ」と自慢気に教えてくれました。さらに続けてこう言いました。「アイディアを思いついて、スタジオのプロジェクトマネージャーと技術担当に話したんだ。そして美術館の関係者に連絡して話をつけた。そうしたら2週間後にやろうという話になったんだ。プロジェクトマネージャーは絶対に無理だと言ったけどね。でもそれでもできたんだよ」

実際に2週間かどうかは別にしても、相当のスピード感をもって実現したのでしょう。彼の持ちうるコネクションと交渉術、知名度を総動員して実現したことが窺えます。彼は人前のレクチャーではスマートな印象を与えますが、実際にはアグレッシブで情熱的、ときにエゴイスティックに映るほどの性格です。とはいえ、世界を舞台に活躍するために必要な貪欲さ、執着心には見習うべき点もあるように思います。

忙しいスケジュールを縫って名古屋と東京で開催されたレクチャーではさすがのプレゼンテーションを披露してくれました。東京ではNOIZ ARCHITECTSの豊田啓介さんとの掛け合いが最高でした。終了後には参加された方々からも、とても面白かったという声を頂きました(
いずれ、当日のレクチャー内容に関するレポートも用意したいと思います)。近い将来、ダーン・ローズガールデの作品を日本で見られることを楽しみに待ちたいと思います。

最後になりましたが、今回の招聘にご協力頂いたオランダ大使館、名古屋大学、国際デザインセンターの皆さんにはあらためて感謝の意をお伝えします。

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