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中国のアートシーン

2015.06.03

BY 田村かのこ(芸術公社)

昨年11月に組織立ち上げを記念したシンポジウムをSHIBAURA HOUSEで開催した芸術公社。相馬千秋さんを含め、パフォーミングアーツに関わるプロフェショナルによるコレクティブな組織です。今回は中国からのゲストを招いたミーティングの模様をレポートとして寄せてくれました。

2015年5月某日、芸術公社はSHIBAURA HOUSE3階のラウンジをお借りして、中国の敏腕アートディレクター張輝(チェン・ファイ)氏との交流をかねた勉強会を行いました。

芸術公社は、時代と社会に応答するあらたな芸術の方法論と、未来に向けた公共理念の提案、体現を通じて、日本およびアジア地域の芸術文化振興に寄与することを目的として、昨年秋に設立されたNPO法人です。様々な専門分野で活動するメンバーがプロジェクトごとにユニットを組み、リサーチから企画および実施までを担当しています。

ミーティングでは、まず張氏からご自身が関わって来たプロジェクトの紹介を中心に、中国のアートの動向についてプレゼンテーションがありました。

張氏は"MONEY" "FUTURE" "TIPS"という3つのキーワードに基づき中国の芸術文化事業の現状をお話くださいました。

(以下、張氏プレゼンより)

"MONEY"
現在中国(とくに上海)では、ミュージアム建設ブーム。The Han Show(武漢)、Himalayas Centre(上海)、Dream Centre(上海)などのショッピングモール併設の観光客向け大型文化施設が次々に建設されている。

文化施設建設ラッシュやアートプロジェクトを支えているのは、そのほとんどが政府関連の助成金であり、企業が芸術関連の支援のために投資をすることはとても少ない。中国はGDP世界2位になったが、国民一人当たりのGDP値はまだ世界84位。チケット代なども海外からの観光客を想定した値段設定で、まだ一般の中国人層には手が出ないほど高い。中国国内での芸術文化への知識や意識の向上が追いついていない状態。

"FUTURE"
グローバル化の流れに乗って中国も海外との交流を広めているが、芸術関係の交流が政治の状態に左右されることが大きい。たとえば欧米諸国だとフランスやドイツとの交流は多いがアメリカは極端に少ない。アジアでは、韓国は多い、日本は少ないと言ったところ。

*日本との関係について 日本とのプロジェクトの連携は、政治界でのトップの失言などにより関係が悪化する可能性があるのでリスクを伴うと認識している中国人が多い。(現に日本の首相の一言により中国で行われる予定だった公演がキャンセルされたことがある)しかしこれは規模の大きいプロジェクトを行う場合の話であり、個人間のプロジェクトでその不安を抱く必要はないと考えている

"TIPS"
中国(人)と一緒に仕事をするためのアドバイス

1. NOW
中国でプロジェクトを企画する際は、スピード感がとても重要。とくにこれからの10年の時間の使い方はとても大事になるだろう。

2. KNOW THYSELF
目的をはっきりと持つ。中国にお金を求めるのか?芸術性を求めるのか?どういった関係性で協同するのか?明確にしておくことが大事。

3. LOCALIZE
海外のものをそのまま中国に持ってきても中国に根付かない。地域密着型で地元の人と息の長い関係を築くことが重要。信頼できるパートナー探しが再重要項目。

4. PEOPLE
中国の人は気持ちの変化が早い!最初に心をつかんで、そのまま一気につくりあげるようなイメージで。

プレゼンの最後に張氏は、これからの展望についてもお話くださいました。

中国ではまだまだ芸術文化に対するリテラシーが低く、企業がお金を出してアートを支援する気があったとしても、リスクを避けて著名な作家の平面絵画を購入するのがやっとな状態。何が起こるかわからない若手アーティストの活動支援やパフォーミング・アーツには手を出さない。

自分は、まだ個展を開いた事もないような若いアーティストを育てるために様々なことを計画していて、2015年にもフィンランドの大規模展覧会に700人の若手アーティストを招へいして30以上の企画を行う予定だ、とのことでした。

その後芸術公社メンバーとの質疑応答の時間では、中国におけるアートの独立性や批評の有無、言語の問題などについて議論しました。

張氏によると、政治的なものなどに対する言及が今でも厳しく検閲されている中国では、一見政治的な表現をしている芸術家や批評家でも、実際はさまざまな背景に配慮して書かれている。態度・姿勢としてそういったことを恐れていない人を見つけることは難しい。

中国で本当の意味でインディペンデントに活動できているアーティストや批評家は極めて少なく、欧米からの助成金で制作を続けたり、批評家の場合は自身の名前や身分をすべて隠してインターネット上で意見を発表したりしている。なんとかしてそういう人たちが活動できる場を用意したい、とのことでした。

張氏は、芸術公社の理念やこれから行う予定のプロジェクトにも多いに共感してくださり、中国での連携方法も探ってみたいと意欲的な姿勢を示してくださいました。まずは中国で、理念に賛同し行動に起こそうと考えている国際的な人材を探すこと、そしてそのような若手を育成する事が大きな課題なので、そこに取り組みたいと話していました。

中国と日本では環境も状況も全く違いますが、張氏が感じている現状へのもどかしさや危機感、それを地道に改善していこうという思いは、芸術公社のメンバーと共通しているように感じました。

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