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ダンスと地域 Vol.1

2015.08.17

BY 井上大辅(Daisuke Inoue)

この度、SHIBAURA HOUSEを拠点としたダンスカンパニー「ダンスポート・シバウラ」で振付を担当することになった井上です。SHIBAURA HOUSEにとっては昨年度のフレンドシップ・プログラムで21世紀ゲバゲバ舞踊団と協働した「気づいたら、ダ2014」が初の本格的なダンスプログラムだったようで、それが発展して今回の「ダンスポート・シバウラ」結成へと繋がっています。

私は学生の時、桜美林大学総合文化学科で演劇を専攻していたのですが、そこで初めて舞台芸術とそれを取り巻く環境について多くの課題を実感しました。特に私が学生だった10年ほど前は「チケット代が高い」「わざわざ劇場に行かなければいけない」「情報が無い」「敷居が高い」といった言葉をよく聞きました。大学を卒業してから振付家・ダンサーとして活動していますが、自身の創作活動と並行してこれらの課題にどう取り組むか考えなくてはなりません。



SHIBAURA HOUSEにとってもダンスプログラムはまだ未開拓分野だそうで、そこで今回“ダンスと地域”をテーマにした連載の依頼を受けました。それにしても“ダンスと地域”とは実に幅が広い...。この連載では私がダンサーとして体験してきた話を通してダンスと地域における実体験を紹介しつつ、ダンスポート・シバウラの話とリンクさせていくことで、このダンスプロジェクトがどこに向かおうとしているのか、SHIBAURA HOUSEと私の抱く“ダンスと地域”の展望について話していこうと思います。

北九州芸術劇場での体験

“ダンスと地域”と聞いて私が最初に思い出した活動といえば、北九州芸術劇場でのプロジェクトでした。北九州芸術劇場は2003年8月に開館した公共ホールです。開館から最初の10年間における達成目標と事業計画を設定。開館13年目にあたる現在は、劇場理念に基づいた【創る・育つ・観る・支える】といった4つのコンセプトのもと、新たな目標設定とともに鑑賞型や体験型など様々な文化事業に取り組んでいます。
私は「京町小屋」(2012年3月)、「ダンスダイヴウィーク」(2014年9月)、「ダンスダンス・リバーサイド」(2015年3月)というプロジェクトに関わってきました。今回はその中でも「京町小屋」と「ダンスダンス・リバーサイド」が“ダンスと地域”というテーマに特化した活動でしたので紹介したいと思います。


「京町小屋」
京町小屋とは北九州芸術劇場と小倉駅を繋ぐ商店街、京町銀天街にある空き店舗や老舗喫茶店の2階空きスペースをミニ劇場(京町小屋)とし、約6日間の会期中はそこでワークショップ(以下WS)やストレッチカフェといったイベントを営みつつ、地元で活動するダンサーと滞在制作をするというものでした。最終日は劇場から京町小屋までをパレードで繋ぎ、WS参加者と共に街頭パフォーマンスや滞在期間中に創作したダンスを上演しました。
この京町小屋はガラス張りで外から中の様子を見渡せる小さな小屋だったのですが、仕事帰りの男性がこちらのWSの様子を見ながらスーツ姿のまま外で一緒に踊っていた様子がとても印象に残っています。1週間の滞在期間でしたがその期間は商店街や劇場職員の方々、地元で活動するアーティストとのやりとりなども深まりそういった出会いをきっかけにしながら創作やワークショップに打ち込めました。



「ダンスダンス・リバーサイド」
2015年3月には劇場周辺をパレードしていく「ダンスダンス・リバーサイド」に総合演出として参加しました。京町小屋」から3年の間に劇場では様々な振付家と地域の団体や企業を結びつけ、オリジナルダンス作品をつくり、地域のレパートリーとして市民にも広げてきました。劇場職員が振付レパートリーを教えてくれたりするのでとてもユニークです。
私のミッションは「劇場のレパートリーをパレードに盛り込む」ことと、「新たにレパートリーとなる振付を創作する」でした。事前のワークショップに集まった参加者は中学生から70代まで約70名近く。本番では飛び入り参加等も含めて最終的には100名を超える規模で北九州芸術劇場横を流れる紫川周辺をパレードしました。中には犬連れの方もいたくらいです。劇場がまとめた本番の様子を公開しているので見ていただけると様子が少し伝わるのではないかと思います。

 

両プログラムともに多くの地域の方に参加していただきました。北九州芸術劇場は精力的に自主事業に取り組む劇場で、地域参加型のプロジェクトも多く実施しています。そういった10年間かけてきた公共ホールとしての積み重ねもあるのでしょうが、それにしても北九州界隈で生活する人に対しての印象としては踊りが好きな人が多いように思います。もしかしたら踊りというよりはお祭りの方がニュアンスとして近いかもしれません。人が大勢集まって何かイベントをするということに積極的な印象があります。

考えてみると北九州市は小倉駅前には魚町銀天街・京町銀天街という2大商店街があり、その奥には旦過市場、また電車で数駅先に行くと門司港もあります。“地域”という視点からみれば、北九州市は昔からコミュニケーションが盛んな街なのかもしれません。個人とコミュニティがはっきりと鮮明な輪郭をもって存在しているとでも言えましょうか、人と街が両方よく見える地域です。

ダンスにはそれがどんなジャンルのものであっても、祝祭的な要素が含まれています。日常を言葉によるコミュニケーションで過ごすご近所が、時に発語を不要とするダンスのような身体表現というコミュニケーションへの試みに北九州界隈の人々がダンスを楽しんでくれる理由があるのかもしれません。“楽しい”に言葉による説明は不要なのかもしれません。

北九州の人たちの踊りの楽しみ方を見ていると、私が何故踊りが好きなのかも再発見させてくれます。北九州芸術劇場でのこれらの体験は私にとっても踊ることを喜べる場所でした。自身の作品創作だけではなかなかこのような体験ができません。時には街やそこで暮らす人と出会ってみて、他者からエネルギーをもらいまた自身の活動に向かう。誰しもがそうやって日常を過ごしているのかもしれません。そんな日常の中で、もしダンスが地域に対してそういう役割を担うことができるのなら、その土地や風土とともに存在する身体表現としてのダンスの在り方のようなものをこのダンスポート・シバウラでも探していくことが大切なことのように思います。

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